
昭和の純喫茶、昭和の歌謡曲、昭和のラブホテル……
半世紀近く前の日常文化が、いま熱く語られている。
半世紀前には生まれてすらいなかった若者たちによって。
いまだ日本最大の集客記録である6千万人以上が集い「人類の進歩と調和」を目撃した、
1970年の大阪万博で頂点に達したあの時代。
あちこちの観光地に、祭の場に、路傍に咲いた昭和元禄の徒花たち。
それはもう昭和を知らない若者の幻想にしか花を咲かせられないのか。
美術館は珍しいもの、ひとつしかないものを集め見せてくれる。
どこにでもあったもの、たくさんあったものは、ほとんど忘れられ、いつのまにか消えていくだけだ。
そうやって僕らはひとつ、またひとつ宝物を失っていく。失ってから気がつくことを繰り返しながら。
長いあいだ日本の路傍をさまよいながら、光と陰のあいだに矢のごとく消えていく文化のかけらを拾い集めてきた。
そのいくつかをここに見せる場ができて、失われた文化の残像だけでも甦らせることができたら、
もう半世紀近くなった僕の旅もまったく無駄ではなかったことになるだろう。
都築 響一
営業時間
水・木・金曜日
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