9 《無題》柊一華 2019

 柊一華(ひいらぎ・いちか)はSMクラブを経営する女王様として働きながら、10年近く前から写真を撮るようになった。愛用するカメラはHOLGA。中判のブローニーフィルムを使用するトイカメラファンにはおなじみの、いいかげんなつくりで、現像するまで結果がわからなくて、その写りの悪さと緊張感がたまらない、そういう楽しさにあふれたカメラだ。

 HOLGAも現在はデジタル版が出ているけれど(デジタルなのにフィルム版と同じく写りが悪いらしい!)、一華さんはフィルムにこだわって撮り続けている。そしてたいていのトイカメラ・ファンが撮るのは公園で遊ぶ子どもたちとか、海をバックに微笑むガールフレンドとか……写りのよくないところが「ラブリー」に見える、そういう写真だけど、一華さんが撮るのはヌード。それもほとんどが女性である。

 父親が亡くなって遺品整理をしていたときに、古いオリンパスのOM-1が出てきて、「使えるのかなと思ってフィルムを買ってきて、子どもとか適当に撮ってみたらすごくいい感じで、それで楽しくなって趣味で撮るようになったんです」。

「そのあとすぐ、ヴィレッジバンガードに行ったときに、HOLGAが売ってたんです。一緒にホルガの写真集も並んでて。でも子どもの写真とかそういのばっかりで「つまんないな~」と。これでヌードとか撮ったらおもしろそうと思ったのがきっかけで、それからずっと使ってます。

 ホルガは自分の思うとおりにならないし、フィルムは高くて一本で12枚しか撮れないし。それでも現像が上がって小さなプリントにいいのが1枚、2枚でもあると、すごいうれしくて「わたし天才!」みたいのを毎回ひとりでやってる(笑)。その楽しさだけでずっとやってるんです。仕事で撮ってるわけじゃなくて、ただ趣味でやってるだけ、展覧会でプリントが売れたらラッキー!ぐらいの気持ちで」。

 今回展示されている一枚も、女王様とグロテスクな性具が重ね合わされたイメージだが、これは意図的なコラージュではなく、ホルガのフィルム巻き上げがうまく作動せず、期せずして二重露光になってしまった結果の作品だ。