39 《喫茶店にて》川上四郎 2010年

 2013年に出版した『独居老人スタイル』(筑摩書房刊、現在はちくま文庫で刊行中)のカバーを飾るゴッホの絵の作者でもある川上四郎は1930(昭和5)年、浅草清島町(現在の稲荷町駅周辺)生まれ。長く国会図書館に勤めながら、多彩な趣味生活を送ってきた。2010年12月に最愛の妻・千恵子さんを亡くされてから、横浜郊外の団地でずっとひとり暮らしを通してきた。

 最近よくマスコミでも報じられる「買い物難民」そのまま、高齢化と過疎化が進むエリアで、川上さんも「買い物が大変なんだけど、運動を兼ねてなるべくマメに出るようにしてます」と言いながら、炊事、洗濯などの雑用もぜんぶ自分で済ませ、絵の教室、書の教室、合唱の集まりと、忙しい毎日を楽しみつつ、なんともユニークな油絵や写真作品をひっそり作りつづけてきた。

 多彩な川上さんは書道も五段の腕前だが、横浜のカルチャー教室に通っておさらいしているうちに、「書道は白と黒の世界でしょ、それで色彩と女体に飢えちゃったんですね(笑)。それまでずーっと、絵は自分には難しすぎるだろうと思ってたんですが、教室に習いに行くようになって、やってみたらけっこううまくいくんです。それですっかりおもしろくなっちゃった」ということで、僕が始めてお目にかかった2012年当時はすでに絵画制作に熱中していた。それから2年くらいおきに横浜のギャラリーでも個展を重ね、自費で制作した作品集も数冊発表してきた。

 川上四郎さんは長年住み慣れた団地生活を終え、いまは介護施設に入居。あいかわらず趣味を楽しむ日々を送っている。