40 電気屋

新宿の外れの寂れた商店街を歩いていたら、閉店した電器屋のシャッターが開いていて、中を覗き込むと電気器具のかわりにたくさんの油絵が飾ってあった。展覧会のようでもなかったが、中に入ってみると奥からおばあさんが出てきて、「店を閉めてからヒマで、地元の絵画教室に通って好きなものを描いてるの」ということだった。風景画あり、祇園の舞妓さんあり、いろんなモチーフがあるなかから、小さな猫の絵を譲ってもらった。あれからどうなったかなと思い、しばらくして商店街を通ってみたら、あたり一帯が再開発になって、もう電器屋がどこにあったかもわからなくなっていた。