41 ガーナの手描き映画ポスター

 木馬責めされているおねえさんの背後に並ぶのはアフリカ・ガーナの手描き映画ポスター・コレクション。

 1980年代から90年代にかけて、ガーナでは「モービルシネマ」と呼ばれる移動式映画上映が盛んに行われていた。ビデオテープの到来とともに始まったモービルシネマは、クルマにテレビとビデオプレーヤーとテープを積み込み、町から町へ、村から村へとガーナ産、また国際的な作品を上映して回っていた。

 大型インクジェットプリンターがなかった時代、上映の宣伝のためにつくられたのが手書きの大判ポスター。小麦粉の麻袋を切り開いた裏面に描かれたポスターは、上映に先立って街角や村々の壁に貼られ、モービルシネマとともに移動していった。

 街角の看板などを描く絵師たちが映画看板も引き受けたのが始まりだったが、問題は絵師たちがだれも、制作に先立ってその映画を観たことがないということだった。なのでまったく想像に任せて、あるときはコミカルに、あるときはグロテスク風味を誇張し、映画の内容からはかけ離れた手書き看板が量産され、人気絵師たちは工房を持つようになった。

 2000年代になってインターネットの発達とともに、ひとびとは家でDVDや配信で映画を楽しむようになり、モービルシネマは壊滅。絵師たちも元の看板描きに戻ったり、動物、自動車、飛行機など、ガーナ特有のさまざまにユニークな棺桶を製作する工房に転職したりしていった。

 転機が訪れたのは2006年にイギリスのアートマガジン「MOLLUSK」でガーナの手描き映画ポスター特集を掲載、海外のアートファンに衝撃を与え、2010年代にはシカゴのギャラリーが往時の絵師、また新たな絵師による再制作ポスターをコミッション、展示販売するようになった。この小部屋に展示されているポスターも、そのギャラリーから入手したものである。